つくばにっき (高エネルギー加速器研究機構出張)
山口大学応用化学科4年生 山田寛太

6月3日から6月18日までの16日間、茨城県のつくば市にある高エネルギー加速器研究機構(以下高エネ研)に実験のため出張に行ってきました!

この体験記を通して、「吉田研としてどのような実験を行っているのか」「高エネ研への出張時の生活はどのようなものなのか」ということをイメージしてもらえると嬉しいです。 それでは、体験記を始めます!


・Chapter.1
そもそも、、、高エネ研って何?? 高エネ研(正式名称:大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構)とは素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所とその付随施設によって構成されている大学共同利用機関法人です! 大学単位では持つことの出来ない大きさや予算の装置を、みんなで使うことを目的に管理しましょうという研究機関です。 2008年にノーベル物理学賞を受賞された小林誠特別名誉教授が在籍することでも知られ、ノーベル賞クラスの研究も数多く行われています! (参考:高エネ研公式の施設紹介ビデオ) さてこんな感じに文字中心で書いていくとすでにこのあたりで読む気がなくなってくると思うので、ここからは写真中心に書いていきたいと思います!

・Chapter.2
高エネ研での生活って?? 上述の通り、16日もの間、同じ施設に寝泊まりしていました。 でもそもそも、「研究所での生活ってどんな感じ?」ということが出てくるのではないでしょうか? そこでまずは、高エネ研での生活について紹介しましょう!

 


これが高エネ研滞在中に過ごしていた部屋です。 何にもない、、、って思った人!何を言うか!ベッドも机もあるではないか! 普通のビジネスホテルより広いです!そしてなぜか結構落ち着く、そんな部屋です。

研究所の宿泊施設らしく、洗濯機、乾燥機も無料で使用することが出来ます!

さらに、シャワー室も最近リフォームされたばかりなので、とても清潔です!

高エネ研滞在時の食事についてです! 高エネ研ドミトリー(宿泊所)内にはファミリーマートの自動販売機などがあり、おにぎり、カップ麺、サンドウィッチ、冷やしうどんなどを買うことが出来ます。

 

 
そのほかにも、高エネ研周辺には様々なお店があり、つくばで有名なスタミナラーメンを食べられるお店、超大盛のどんぶりが有名なお店などなど、個性的なお店が数多くあり吉田先生の車で連れて行っていただけることもしばしば、、、

著者のおすすめは、つくばではちょっと有名な天丼屋さんの「野菜天丼」です。 マイタケ、サツマイモ、ピーマンなどのてんぷらとごはん、甘辛い特製のたれが絶妙にマッチした至高の逸品です。(褒め過ぎですかね) おいしさのあまり写真を撮ることを忘れてしまいました。 気になる方はぜひ吉田研へ来てください! 連れて行っていただけるでしょう!

焼肉でディナー、おいしかったです(東京理科大学の先生方と行きました)。



・Chapter.3
高エネ研での実験 高エネ研には前述のとおり、素粒子原子核の研究を行っている施設(Super KEKB)と放射光という特殊な光を用いて物質生命科学研究を行う施設(Photon Factory:通称PFとPF-AR)という施設があります。 このうち我々が実験を行っているのはPFです。

では、放射光施設PFがどんな施設なのか書いていきたいと思います。

いかにも物々しい扉を通り抜けると このような空間が広がります。



この写真が、PF内を二階にある渡り廊下から撮影した写真です。 見て分かる通り、、、 とにかく広いです!



  角度を変えるとかこのような感じで、様々なケーブルやラインが設置されています。 最初は迷います。「山田君、何とかの部品、どこどこでとってきて~」と言われ、取りに行くと、どっちに歩いているのか訳分からなくなります。 でもそれにも数日中になれるので問題ありません。

ポイントは写真中にも書いてある「BL-12C」などといった番号です。 BLはビームラインの略であり、1-20までと27、28の計22本があり、これが中心の円形リングから伸びています。 この法則さえつかめば問題なし!自由に動き回ることが出来ます。

今回我々のグループが実験で使ったのは「BL-16」と「BL-9A」という2つのビームラインです。 このラインの末端に我々の持っているチャンバーを取り付け、実験を行います。



最初の状態はこんな感じです。 この空いている空間に装置を運び込み、接続させます。



完成しました。こんな感じです。 はい、まったくわかりません。

角度を変えると、、、



少しはわかりやすくなりましたか、、、? この写真の写っている装置群が、わが吉田研所有の装置です。

このような感じのチャンバーの中には反応を行うセルがあり、その内部に溶液を循環させながら放射光を当てて実験を行います。

でもまず装置を付けた後、放射光を探す必要があります。 放射光は光なので直進します。つまりビームラインの根元からの直線上にチャンバーが来るようにセットしなければいけません。 またX線は目に見ることができません。

そのため、チャンバー内にX線が当たると蛍光を発する蛍光粉末を塗ったガラス板を取り付け、必死になって装置を微妙に動かしていきます。 すると、、、



み、、、見えた!! 感動の瞬間です。 写真中の白い板の中心で光っているのがX線です。こうしてセットアップが完了します。この後、先ほどのガラスを取り外し、溶液用のセルと取り付け放射光を照射しながら反応を行います。

今回はここでもう一つ問題が! チャンバー内を高真空に、チャンバーとビームライン接続部を超高真空にしないといけないのですが、圧力が一向に下がらない。 どこかから空気が漏れていることは確実なのですが、それがどこかわからない。 地獄の始まりです。 手あたり次第いろいろなボルトを締め、真空にひき、まだ漏れていると落胆しまたいろいろやる、、、 これが永遠に続きました。心が折れそうになりました。 そして12時間以上経過したその瞬間!

来た!!

目標の真空まで、引けました!! 片方のゲージが高真空部(5.0×〖10〗^(-3) Torr ≒ 6.7×〖10〗^(-1) Pa)、もう片方のゲージが超高真空部(4.3×〖10〗^(-5) Pa)! 超高真空部に至ってはISS(国際宇宙ステーション)が飛行している高度の宇宙空間と同程度の真空度です!

これでやっと実験が出来ます! 測定開始!!

パソコン上にプログラミングが組まれており、それの操作することによって計測が開始しデータがモニター上に表示されます。 そのデータを見てああだこうだ議論します。

非常に深い議論です。

残念ながら、機密事項のため詳細な実験データの話などはできませんが、放射光を用いると極めて有用なデータを取得することが出来ます。

先ほど、「BL-16」と「BL-9A」という2つのビームラインを用いて実験を行ったというように記載しましたが、この2つの違いは、用いることができるX線のエネルギーです。 「BL-16」はSoft X-ray(低エネルギーX線)、「BL-9A」はTender and Hard X-ray(中、高エネルギーX線)を用いることによります。 このように、一つの施設にありながら様々なエネルギーのX線を用いることができることこそ、放射光施設の最大の特徴です。 これにより、サンプル中のどの元素の挙動を見たいかを分けながら観測することが出来ます。

この、我々が行っている放射光を用いた溶液反応の実験はここ20年間程度で確立した新しい実験手法であり、特に、写真にある軟X線を用いた溶液反応の実験は2010年代に入ってから確立された極めて新しい技術です。 そのため実験装置も完成されたものがなく、かなりの部分自作しており、測定に関する条件その他技術もまだまだ発展途上のものであります。 そのような大変さがある一方、確実に人類最先端を歩んでいるものであり、我々はこの技術で社会の輝かしき未来に貢献できるものと自負しております。

「人類が未だ見たことがない、新たな世界を切り開くために。」

この思いを共に持ち、歩んでもらえる人・放射光科学を共に盛り上げてもらえる人・未知の世界に共に挑戦してもらえる人。 吉田研はそんな皆様を待っています。 人類の明日を共に作っていきましょう。

研究室見学、いつでも大歓迎です! 直接先生を訪ねるハードルが高いと感じる場合には、著者(B4山田)まで! いつでも温かく迎えます。


吉田研究室のメンバー。高エネ研にて。


それでは、皆様のお越しをお待ちしております。



次回、あいちにっき(ver:UVSOR)があるかもしれません。 お楽しみに! to be continued...?







山口大学工学部応用化学科
吉田真明

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