あいちにっき (自然科学研究機構分子科学研究所体験日記)
山口大学応用化学科4年生 山田寛太

9月3日から9月8日までの6日間自然科学研究機構分子科学研究所(以下分子研)に実験のために出張に行ってきました!

前回の「つくば日記(高エネ研体験記)」と合わせ、吉田研がメインで用いている放射光施設での実験の様子を紹介できると思います。 今回はまず分子科学研究所の紹介をした後に、基本的に写真とその写真の解説という形式で紹介していきたいと思います。 それでは体験記を始めます!

・Chapter.1
そもそも、、、分子科学研究所って何?? 分子研(正式名称大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所)とは愛知県岡崎市にある自然科学研究機構を構成する機関であり、世界トップクラスの分子科学研究を行う拠点となることを目的として1975年に設立された研究機関です。 物理学者、科学者の間では「ノーベル賞をとるために設立された研究所」と言われています。

分子研の心臓ともいえる研究施設が極端紫外光研究施設(UVSOR)です。 この施設こそが、我々吉田研が実験で利用している放射光施設であります。



・Chapter.2
分子研の施設紹介、研究風景など

◆UVSOR実験ホール(全体像)



青い矢印がシンクロトロン中を光速近い速度で周回する電子の軌道、赤い矢印がその電子を磁力で曲げることにより接線方向に放出する放射光の軌道です。 この放射光をチャンバーの中に導いてきてサンプルに照射することにより実験を行います。

◆BL-3U(今回実験で用いたビームライン)



今回、吉田研の実験で用いたビームライン(放射光を導いた軌道番号)の写真です。 中央左寄りに放射光の強度やエネルギー、位置等を制御する各種装置が、右寄りに実際に放射光が導入されるチャンバーがあります。

◆使用したチャンバー



赤丸がサンプルをチャンバーに挿入する装置、青丸がチャンバー内でのサンプル位置、黄色矢印が放射光の軌道、緑四角が透過量を測る装置です。 用いるX線は軟X線なのでチャンバー内をヘリウムで置換させます。

◆セル調整

 

 
シリコンナイトライド(SiN)膜という息で破れる薄さの膜で溶液を挟み、その膜の上に触媒となる金属を電着させることでセルを作ります。 1枚目:膜をセットしている様子。かすかな振動でも破れてしまう薄さであるうえ、1枚1万円程度する非常に高価なものなので細心の注意を払って作業します。 2枚目:顕微鏡で観察したセルの様子。金色の四角い物が膜です。溶液を流しているのでわずかに膨らんでいます。

◆チャンバー内にセルをセット



先ほど顕微鏡を用いて作成したセルをチャンバー内にセットします。 装着させる器具がステンレスでできておりそこそこ重い上に少しぶつけると膜が破けてしまうので、先ほどと同様慎重に作業します。 この後、チャンバー内をヘリウム置換し、膜に電圧をかけることで溶液の中に溶解している金属イオンを膜表面に電着させます。(金属メッキをするのと同じ原理です。)

◆電着状況の確認作業



顕微鏡で膜を観察することにより、触媒金属の電着状況を確認できます。 同じ条件でも様々なつき方をしてしまい、いまだ手法を確立できていませんが、回数を重ね、データを蓄積し、よいサンプルを作る条件を決めることも実験の重要な要素の一つです。

このような手順で実験準備を行い、触媒反応下での軟X線XAFS測定を行いました。 設備面、プログラム面、運転面等、研究所の方には大変お世話になっています。 大学にいるだけでは出会えない、その様な人脈を広げることが出来るのも学外の研究所で実験を行うことのメリットなのかもしれません。

◆焼き肉で夕食



いいデータがとれ、翌日に36時間ぶっ続けを控えた中盤、打ち上げと決起の意味を込めて先生の奢りで焼き肉に行きました。 せせり、おいしかったです。ごちそうさまでした!

◆最後に集合写真



今回は、吉田准教授(写真中央)、M2樋上さん(写真左)、筆者山田(写真右)の三人で実験を行いました。 途中、装置トラブルや施設のビーム停止等予期せぬ出来事に見舞われましたが、とてもうれしい結果を得ることもできました。

我々吉田研は世界でも未だ報告のない物質の溶液XAFSによる挙動をもターゲットにし、日夜オペランド観測をはじめとする実験を行っています。

見学希望者は学年を問いません! 是非総合研究棟6階吉田研にお越しください!








山口大学工学部応用化学科
吉田真明

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総合研究棟6階 614号室
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